院長ブログ

  • 治療継続期間について 2022年04月24日

    ・日本神経精神薬理学会から公表されている統合失調症薬物療法治療ガイドラインが改訂され2022年版になるとのことで、少し前までパブリックコメントが募集されていました。

    ・内容を拝見していて前の版にあったCQが一部無くなっていて(例えばCQ1-4:初発精神病性障害の再発予防効果における抗精神病薬の最適な治療継続期間はどのくらいか?)、これはAPAガイドライン2020と同じくTiihonenらの報告(Am J Psychiatry. 2018 Aug 1;175(8):765-773)などが影響したためなのかな?などと思っていたのですが、観察研究の帰結はこのガイドライン構築のためのエビデンスとしてみる限り採用されていないようなので、そうではないようです。

    ・今回無くなったCQの一部の現段階での答えにあたるような論文がでました(文献1)。Asian network of early psychosis working groupによるもので、総説として読んでみてもとてもよくまとまっていて勉強になりました。日本からもこの分野の第1人者である慶應の竹内先生らが参加されています。この論文のfirst authorかつ初発精神病エピソードの10年予後の論文(Lancet Psychiatry 5:432-442. 2018)で有名なDr.Huiらのグループが以前よりこのテーマに関してかなり精力的かつ重要な報告を数多くされていることがわかり驚きでした。今後の動向も要注目となります。

    ・まずここ最近で一番新しいと思われるAPA2020のこのCQに関する内容(Am J Psychiatry 177:9, September 2020)ですが、概略は以下の通りとなります。

    ・抗精神病薬で症状が改善した統合失調症患者に対して、抗精神病薬による治療を継続することを推奨する
    ・維持療法を継続することの利点としてTiihonenらの観察研究の報告(Am J Psychiatry. 2018 Aug 1;175(8):765-773)も引用されている
    ・治療が進むにつれて、抗精神病薬による治療を継続することのプラス面とマイナス面を、患者との共同意思決定という観点から検討する必要がある。
    ・家族やその他の支援者を巻き込むことは、アドヒアランスを改善するのに有効である。剤型がアドヒアランスに影響することもある
    ・精神病エピソードが短期間であったり不確かな精神病診断(例えば、物質誘発性精神病や気分障害関連精神病の可能性)を持つ人の中には、抗精神病薬治療の継続を必要としない人もいるかもしれない。一方、慢性的な症状を持ち、再燃を繰り返し、統合失調症の診断上の特徴が明らかな人は、薬物療法を中止した場合、より悪い結果をもたらす可能性が高い。

    ・というわけで、APAガイドラインの前のバージョン(2004年版でしょうか?)と同じく、治療継続が推奨されています。

    ・ではAsian Network of Early Psychosis Writing Groupのガイドラインではどのようになっているでしょうか。概略は以下の通りとなります。
    (1)抗精神病薬は、初回精神病エピソードから少なくとも1〜3年間は継続する。抗精神病薬の中止を希望する患者には、患者が自分の病気について主体的に考え、患者独自の特徴や再燃の早期警告徴候を認識できるように、意思決定のプロセスを共有し、中止のリスクと利益を患者と話し合った上で決定すること。中止する場合、再燃が急速に起こる可能性があり、再燃が洞察力の喪失や助けを求める行動の低下と関連する可能性があることを注意するべきである。
    (2)抗精神病薬の中断が成功するかどうかは、統合失調症以外の診断、発症前の社会的・職業的機能の向上、社会的支援の充実、DUPが短いこと、認知機能障害がない、好ましい特性(自己統制感に関連する内的統制などの評価と自尊心など)、回復力が高いこと(病前機能発達の程度や良好な予後因子、良好な特性などから推測される)、自殺傾向や危険な行動がない、などによって予測することができる。初回エピソード後に再燃した経歴を持つ患者には、治療中止しないことを勧めるべきである。
    (3)抗精神病薬を中止する前に、6~12 ヵ月間、症状(PANSS の P1~3、N1、N4、N6、G5、G9 のスコアが 2 以下)及び機能の回復が得られていること
    (4)抗精神病薬の漸減は6-12ヵ月かけて行い、精神病症状の再出現や再燃の兆候を注意深く観察する。減量は個人差はあるが徐々に行い、1回の減量は前投与量の25%を超えないこと。投与中止前の最終的な抗精神病薬の用量は、リスペリドン1mgと同等かそれ以下とする。
    (5)抗精神病薬中止の過程では、自己効力感、疾病管理、社会的・職業的機能の改善を目的とした患者・家族への心理社会的介入を実施すべきである。ケースマネージメントと継続的な支援と監視は、抗精神病薬中止後少なくとも2年間は継続されるべきである。
    (6)抗精神病薬中止後に減弱した陽性症状が出現した場合には、集中的かつ頻繁に心理社会的介入を行うべきである。出現している症状を評価し,抗精神病薬の再開を決定する必要がある。精神病症状が改善しないないし悪化する場合には、共有の意思決定プロセスを通じて、抗精神病薬の服用を再開するかどうかを速やかに決定する必要がある
    ・このガイドラインの最も重要な点は、中止の基準について、症状の寛解だけでなく、包括的な回復(陽性症状と陰性症状の消失、機能回復)を求めるという、より保守的なスタンスを採用したことである。

    ・以上となります。ここ10年ほどはガイドラインはWunderinkらの報告(JAMA psychiatry 70:913-920 .2013)などの影響もあり、下村先生らの報告(Schizophr res 215:8-16:2020)によると維持療法期の抗精神病薬中止について「推奨しない」から「一部推奨」に傾いていたようです。しかし直近2つ(統合失調症ガイドライン2022を入れると3つ)のガイドラインは中止に対してより慎重な方向にシフトしているようです。また共同意思決定や心理社会的介入が重視されていることもポイントとなります。

    文献1:Christy L.M. Hui et al. Int J Neuropsychopharmacol. 2022 Apr 22:pyac002. doi: 10.1093/ijnp/pyac002. Online ahead of print.

  • 運動とうつ 2022年04月17日

    ・dose-response meta analysisは視覚的にわかりやすく結果が提示され、妙に説得力があるのですが、運動とうつの関連についてのdose-response meta analysisが公表されました(文献1)

    ・前向き観察研究からの帰結なので、うつに対する脆弱性の高い人が運動をしない可能性があるという逆因果関係などのバイアスには注意が必要ですが、週2.5時間の早歩き程度の運動量を継続すると、うつ(大うつ病のみではなく、スクリーニング用紙などでカットオフ値以上のうつ状態を含む)の相対リスクは25%低下し、現在の罹患率から推定すると、うつを11.5%(うつ病だと7.3%)減少させることができる可能性があるとの結論でした。

    ・睡眠時間を増やした先日の報告(JAMA Intern Med. 2022 Feb 7. doi: 10.1001/jamainternmed.2021.8098. Online ahead of print.)もですが、忙しくても生活習慣をきちんと見直せば、時間はつくれるもののようです。1週間くらい自分の生活記録をしてみて、振り返ってみるのもいいかもしれません。

    運動とうつ病リスク

    背景

    ・前向き観察研究(n=49)のメタ解析(Am J Psychiatry. 2018; 175(7):631-648.)では、平均7.4年の追跡期間で身体活動レベルが最も低い群と比較して、最も高い群はうつ病発症の調整後オッズ比が0.83(95% CI, 0.79-0.88) と報告された。この効果は高齢者においてより良好(オッズ比=0.79)であった。

    ・別のメタ解析(Br J Sports Med. 2021; 55(16):926-934)では、111の前向きコホート研究を対象にうつ病ないし診断閾値下のうつ状態発症率について、身体活動度が高い群は低い群と比較して調整後オッズ比が0.79(95% CI, 0.75-0.82) と報告された

    ・運動量とうつ病リスクとの関連についてdose-responseメタ解析はこれまでされていないのでしてみた

    対象と方法

    ・18歳以上を対象とした前向きコホート研究

    ・身体活動度を3段階以上で評価したもので、うつ病発症リスク(DSMないし ICDによる診断もしくはスクリーニングでカットオフ得点以上で定義される)を報告したもの。サンプルサイズが3000人以上かつフォローアップ期間が3年以上

    ・身体的活動量の指標として、1週間あたりの安静時代謝率(1 MET)を超過して消費されたエネルギーを反映する運動量(marginal metabolic equivalent task hours=mMET-h/週)を使用。1週間あたりの運動時間に軽い運動では1.5 mMETを、中等度の運動では3.5 mMETを、激しい運動では7.0 mMETを掛け合わせてmMET-h/週を算出。エネルギー消費量について報告した1つの報告については、1 kcal/kg= 1 MET-hに換算。またほとんどの報告が仕事以外の運動を活動量指標としていたが1つの報告は仕事も含めた運動量を用いており、この報告については、仕事量をMETに換算し、その分を差し引いて、身体活動量を求めた

    ・Dose-responseメタ解析については、人年数の0、37.5、75パーセンタイル点にノットを有する制限付き三次スプライン曲線でフィッテングした
    さらに、どの程度リスクを低減できるかの指標であるPIFs(potential impact fractions)をWHOが推奨する運動量である、8,8 mMET-h/週(中等度の強度の運動を週に2.5時間行ったことに相当)、さらなる健康のために推奨される運動量である17.5 mMET-h/週、さらに推奨運動量の半分の4.4 mMET-h/週について算出した

    結果

    ・15 studies(n=191130)

    ・運動を全くしていない成人に対して、WHO推奨運動量の半分(4.4 mMET-h/週)をしている人は、うつリスクが18%(95%CI、13%-23%)低かった。

    ・推奨される8.8 mMET-h/週の運動をしている人は、うつリスクが25%(95%CI、18%-32%)減少することを示唆する結果が得られた。この運動量を超えると潜在的な利益は減少し、不確実性が高くなった。

    ・PIFを見積もると、すべての成人が少なくともWHOの推奨する週に8.8 mMET-hの運動を行うと、うつ患者(大うつ病のみではなく、一部試験でのエントリー基準(スクリーニング用紙でのカットオフ以上になったケースも含む)に合致するもの)を11.5%(95%CI、7.7%-15.4%)減少させることができる可能性がある。17.5 mMET-hでは13.9%、4.4 mMET-hでは6.4%となった。

    ・大うつ病についてはPIFは8.8 mMET-hでは7.3%、17.5 mMET-hでは8%、4.4 mMET-hでは3%となった

    議論

    ・軽度の運動であってもうつ病リスクの低減にかなり寄与しうる可能性があることを示唆する結果となった。週2.5時間の早歩き程度の運動量を積み重ねると、うつのリスクは25%低下し、その半分の量では、運動しない場合に比べて18%低下した。

    ・うつ病の予防効果は、運動に伴う身体イメージの改善、社会的交流の増加、内因性カンナビノイド系の活性化などの神経内分泌機能の変化、脳構造の変化、対処戦略の向上などの影響も関与している可能性がある。

    ・考慮すべきバイアスとして、ベースラインでうつ症状を有する場合(2つの試験でベースラインのうつ病を除外していなかった)、ないしうつ病の寛解状態であった場合、逆因果バイアスが混入する可能性がある

    ・限界としては、運動量が、全て自己報告式であったこと。そのためリコールバイアスや、 social-desirability(社会的望ましさ)バイアスが混入しうる

    文献1:Pearce M. et al. JAMA Psychiatry. 2022 Apr 13. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2022.0609. Online ahead of print

  • 維持療法期間のここ最近の報告について 2022年04月09日

    ・年度が新しくなり、勉強会も2年間で一巡して統合失調症に戻ってきたところです。

    ・統合失調症維持療法期間の論文で、勉強会でチェックしておくべき論文をまとめておこうと思い、ここ数年以内のものではだいたい以下のような論文をおさえておくといいのかなと思って独断と偏見でリストアップしてみました。重要なもので見落としているのがあるかもしれないです。

    1)Leucht S. et al. Examination of Dosing of Antipsychotic Drugs for Relapse Prevention in Patients With Stable Schizophrenia: A Meta-analysis. JAMA Psychiatry. 2021 Nov 1;78(11):1238-1248.

    ・dose-response meta analysisを用いた解析が新しく、2011年の慶應の内田先生らの報告(Schizophr Bull. 2011; 37(4):788-799)の解析が論文内でアップデートされたりしています。用量として1 DDD(リスペリドン換算で5mg)くらいが再燃予防によさそうで、これを超えてもあまり利益がなさそうということです。ただし代謝活性などが個人で異なるため、最適な維持用量については個別に設定する必要があります。

    2)Taipale H. et al. Real-world effectiveness of antipsychotic doses for relapse prevention in patients with first-episode schizophrenia in Finland: a nationwide, register-based cohort study. Lancet Psychiatry. 2022 Apr;9(4):271-279. doi: 10.1016/S2215-0366(22)00015-3. Epub 2022 Feb 16

    ・標準用量と比較すると、低用量の抗精神病薬(<0.6 DDD/日)は、2回目の再燃のリスクが大幅に高く(対標準用量の調整後HR 1.54) 、2回目の再燃後にすべての用量で再燃予防効果が低下する傾向がみられたというもの。再燃エピソードを繰り返す度に治療反応性が悪化する可能性があるため、2回目の再燃をいかに防ぐかが重要であることを示唆する報告です。最近の治療抵抗性に関する疫学研究(Schizophr Bull. 2021 Mar 16;47(2):485-494)とも関連して、クロザピンの導入をあまり遅らせるべきではないのではないかということにもつながるかと思います。5回目までの再燃エピソードについて解析した点が新しく、2回目の再燃までについては、2019年に慶應の竹内先生らが報告された結果(Neuropsychopharmacology. 2019 May;44(6):1036-1042. doi: 10.1038/s41386-018-0278-3. Epub 2018 Nov 22)を再現するものです。

    3)Christy L M Hui et al. Long-term effects of discontinuation from antipsychotic maintenance following first-episode schizophrenia and related disorders: a 10 year follow-up of a randomised, double-blind trial. Lancet Psychiatry. 2018 May;5(5):432-442.

    ・初発精神病エピソード後、2年間継続し断薬をした群よりも、治療開始後3年以上継続した群の方が10年予後が有意に良かったという報告。使用した薬剤がクエチアピンであったことや、nが小さいことなど一般化するには問題があるかもしれませんが、今後のガイドラインに影響を与える可能性のある結果かもしれません。

    4)Irene Bighelli et al. Psychosocial and psychological interventions for relapse prevention in schizophrenia: a systematic review and network meta-analysis. Lancet Psychiatry 2021; 8: 969–80

    ・非急性期における統合失調症の心理社会的介入による再燃予防効果を比較したネットワークメタ解析です。再燃率でみた場合、家族関係介入、家族への疾病教育、認知行動療法、患者への疾病教育、複数の介入を組み合わせた統合的介入、再発防止プログラムなどが通常治療と比較して有意に再燃予防効果が優れていることを示唆する結果となりました。維持療法期間における心理社会的介入の重要性を示唆するものです。

    5)Johannes Schneider-Thoma et al. Comparative efficacy and tolerability of 32 oral and long-acting injectable antipsychotics for the maintenance treatment of adults with schizophrenia: a systematic review and network meta-analysis. Lancet 2022; 399: 824–36

    ・安定期における統合失調症維持療法期間における抗精神病薬の再燃予防効果をみたネットワークメタ解析です。クロザピンは解析対象に含まれていませんが、全体として維持療法期間における抗精神病薬間に再燃防止の観点からは明確な差を見出すことはできませんでした。長期内服の必要性から忍容性が薬剤選択の重要な基準となりうることを示唆する結果になります。

    6)Lasse Brandt et al. Adverse events after antipsychotic discontinuation: an individual participant data meta-analysis. Lancet Psychiatry. 2022 Mar;9(3):232-242

    ・維持療法期における抗精神病薬中断試験での離脱症状についての報告です。不安や下痢、不眠などが継続群と比較して有意に多い結果となりました。漸減中止は有害事象の有意な減少と関連していました。これに関連して、再燃リスクを最小化するための抗精神病薬の漸減法について提案された論文(Schizophr Bull. 2021 Jul 8;47(4):1116-1129)についてもチェックしておくべきかと思います。

    7)Georgios Schoretsanitis et al. Predictors of Lack of Relapse After Random Discontinuation of Oral and Long-acting Injectable Antipsychotics in Clinically Stabilized Patients with Schizophrenia: A Re-analysis of Individual Participant Data. Schizophr Bull. 2022 Mar 1;48(2):296-306

    ・どのような特性を有する方が抗精神病薬を中断可能なのか、期待したのですが、まだまだはっきりとした結論が出せる段階ではないようです。喫煙や性別(女性)などが有意な再燃リスク因子として抽出されていました。また中断後の再燃率(中央値で4カ月間くらいの期間)について、LAIの優位性に驚きました。1年後や3年後などでみた場合にはどうなるかは気になるところです。

    8)Christoph U Correll, Oliver D Howes Treatment-Resistant Schizophrenia: Definition, Predictors, and Therapy Options. J Clin Psychiatry. 2021 Sep 7;82(5):MY20096AH1C. doi: 10.4088/JCP.MY20096AH1C

    ・治療抵抗性統合失調症についての総説です。primary TRS、secondary TRSの疫学やクロザピンなどについて要点がまとめてあります。ここ最近、慶應の中島先生が主催されているLINEのオープンチャット(ゆるゆるLINE抄読会)に参加させていただいているのですが、各分野の最先端を走る先生方からいろいろと教えていただけたりしてとても勉強になっています。若い先生方は是非参加されると良いと思います。詳細は中島先生のtwitter(@Luke_629)をフォローしてください。

    9)Jari Tiihonen et al. Association of Antipsychotic Polypharmacy vs Monotherapy With Psychiatric Rehospitalization Among Adults With Schizophrenia. JAMA Psychiatry. 2019 May 1;76(5):499-507.

    ・再入院リスクに関して多剤併用療法の予防効果をみたコホート研究になります。クロザピン+アリピプラゾールの優位性が目立つ結果となっています。他の抗精神病薬に関しても、いくつかの組み合わせが評価されており、多剤併用は原則的に推奨はされませんが、いろいろと考察ができそうな内容になっています。

     

  • 再発・再燃予防のために修正可能なリスク因子 2022年03月29日

    ・統合失調症の再発・再燃には様々なリスク因子が報告されており、BAPガイドラインでは再発・再燃の予測因子として、服薬アドヒアランスの悪さ、男性であること、DUPが長いこと、病前の社会機能の悪さ、ベースラインでの陰性症状の重症度、物質使用障害の併存、治療者との治療関係の希薄さ、患者とその家族や介護者との間の相互作用の希薄さ、ライフイベントや家族の高感情表出(high EE)などがあげられています。しかし性別などはいかんともしがたいため、今回は修正可能な(modifiable)リスク因子についての中国からの報告(文献1)をまとめてみます

    統合失調症再発・再燃予防のための修正可能なリスク因子

    背景


    ・統合失調症における再発・再燃の予測因子については、観察期間、統計手法、医療制度などが異なるため、未だコンセンサスが得られていない。今回、中国の10の精神科病院における統合失調症患者を対象に、多施設後ろ向き観察研究を実施した。

    ・リスク因子として様々な情報を収集し、退院後1年間の統合失調症患者における再発・再燃のリスク因子を3つの異なる統計手法を用いて解析することで、整合性を検証し、臨床的予後を改善するために修正可能なリスク因子を同定することを目指した

    対象と方法

    ・18-65歳の統合失調症患者(ICD-10)

    ・2009年から2012年までの特定の期間内で中国の10か所の精神病院にて回復(recover)ないし改善(improve)し退院した患者 n=1487

    ・情報は2つのリソースから質問紙により収集された。1つは病院カルテより患者の人口統計学的情報と統合失調症罹病期間、発症年齢、生涯入院回数、最終入院期間、身体・精神疾患の家族歴、喫煙/アルコール依存症歴などが収集された。もう1つは退院後1年目に17項目の半構造化質問紙を用いた電話インタビュー(主に患者の介護者に対して)により収集された。

    ・再発・再燃の定義として自己申告または介護者による電話インタビューで臨床的に有意な精神病症状の増悪が見られた場合に再発・再燃と定義した。

    ・症状の悪化の評価基準として、抗精神病薬治療の変更、通院回数の増加、再入院、自傷行為・攻撃的行動・自殺念慮・他害念慮による監視の強化の4つが評価され、この4つの基準のうち、少なくとも1つを満たした場合を再発・再燃と定義した。

    ・電話での回答者が報告した服薬行動に基づいてアドヒアランスを評価した。服薬中断は顕著なノンアドヒアランスとした。退院後の服薬行動によって、アドヒアランスを3段階に分類した。(1)アドヒアランス良好(服薬継続がほとんどで、非服薬期間の合計が2ヶ月未満、または服薬中止期間が2週間未満)、(2)中等度のノンアドヒアランス(服薬継続が半分程度の期間、もしくは全非服薬期間が2ヶ月以上かつ6ヶ月未満、もしくは服薬中断期間が2週間以上2か月未満)(3)重度のノンアドヒアランス(服薬がほとんどない、非服薬期間の合計が6ヶ月以上、または2ヶ月以上の服薬中断)

    ・統計解析はカイ二乗検定、ロジスティック回帰分析、決定木分析の3つの手法により行われた。カイ二乗検定は、再発・再燃に関連する有意なリスク因子を同定するために実施。カイ二乗検定で有意であったリスク因子を用いて、各リスク因子毎の再発リスクのオッズ比をロジスティック回帰分析で導出。ロジスティック回帰モデルでは、服薬アドヒアランス、雇用状況、対人関係、ADL、世帯収入、治療効果、医療費の支払い、家族とのコミュニケーション、病院ランク、性別、退院時の服薬パターンを独立変数とし、再発を従属変数とした

    ・決定木分析では、全サンプルのうち1,020件をリスク因子を同定するための訓練用サンプルとし、残りの275件が抽出されたリスク因子の妥当性を検証するための検証用サンプルとして使用した。項目はすべてカテゴリー変数[服薬アドヒアランス、雇用状態、収入、ADLなどロジスティック回帰分析の独立変数として用いられた項目]として分析された。

    結果

    ・対象患者の平均年齢は35.5歳で、女性828人(55.7%)、男性659人(44.3%)。また,1,295名の患者から1年後の情報が得られ,うち465名(35.9%)に再発・再燃を認めた。

    ・中等度のノンアドヒアランスおよび重度のノンアドヒアランス群をノンアドヒアランス群と定義した場合、非ノンアドヒアランス群(=アドヒアランス良好群:過去1年間で非服薬期間の合計が2ヶ月未満、または服薬中止期間が2週間未満)の割合は52.9%であった。

    ・カイ二乗検定により有意な再発・再燃因子として抽出されたものは以下の9つであった。

    (1)服薬アドヒアランスでは,アドヒアランス良好群は,ノンアドヒアランス群よりも再発・再燃リスクが低かった(アドヒアランス良好群対ノンアドヒアランス群の再発・再燃率 22.9% 対 55.7%, OR = 4.23, 95% CI = 3.32-5.38)。

    (2) 職業別では、就業者は無職者に比べて再発・再燃リスクが低かった(就業者 vs. 無職者の再発・再燃率。19.7% 対 42.7%, OR = 3.04, 95% CI = 2.29-4.04)

    (3)対人関係では、社交的な人は非社交的な人よりも再発・再燃リスクが低かった(社交的 vs 非社交的の再発・再燃率:22.3 % 対 42.8%, OR = 2.61, 95% CI = 1.93-3.52 )。

    (4) ADLでは,日常生活が困難な患者は,ADL正常な患者よりも再発・再燃リスクが高かった(ADL正常 vs. 日常生活困難の再発・再燃率 28.4% 対 54.3%,OR = 3.00,95% CI = 2.13-4.21 )

    (5) 世帯収入では,毎月の世帯収入が3,000元以上(約6万円)の患者は,3,000元未満の患者より再発・再燃リスクが低かった(世帯収入3,000元以上の再発・再燃率28.6% 対 3,000元未満の再発率42.4%,OR = 1.83,95% CI = 1.43-2.36 )。

    (6)退院時の治療効果では,改善(improve)した患者の方が回復した患者(recovery)よりも再発・再燃リスクが高かった(回復と改善の再発・再燃率:26.2% 対 38.8%,OR=1.78,95%CI=1.34-2.38)。

    (7) 医療費の支払い方法では、自己負担者は医療保険者よりも再発・再燃リスクが低かった(自己負担 対 医療保険者の再発・再燃率:28.3 対 38.9%, OR = 0.62, 95% CI = 0.48-0.81 )。

    (8)家族のコミュニケーションについては、家族間のコミュニケーションが良好な患者は、コミュニケーションが不十分な患者よりも再発・再燃リスクが低かった(コミュニケーション良好 対 コミュニケーション不十分での再発・再燃率:31.9 対 39.7%, OR = 1.49, 95% CI = 1.02-2.17)

    (9)病院のランクでは、治療のために三次機関は一次・二次機関に行った人より再発・再燃のリスクが低かった(三次機関 対 一次・二次機関の再発・再燃率、33.5 対 42.4%, OR = 1.46, 95% CI = 1.14- 1.89)

    ・多変量解析の結果、9つの因子は互いに独立しており、相関関係は有意ではなかった

    ・再発・再燃の高リスク因子を特定するために、ロジスティック回帰分析を行った結果、服薬アドヒアランス(OR = 4.07, 95% CI = 2.94-5.64) 、雇用状況(OR = 2.50, 95% CI = 1.65-3.79) 、ADL(OR = 1.88, 95% CI = 1.27-2.77) 、医療費の支払い方法 (OR = 0.56, CI = 0.37-0.84) が有意な再発・再燃のリスク因子として同定された。

    ・退院した統合失調症患者では、服薬アドヒアランスが良好で、就業しており、ADLが正常で、医療費の自己負担がある人は再発・再燃が少ないと考えられた。

    ・決定木モデルの陽性予測値(PPV)は0.726であり、72.6%の再発・再燃を正しく予測することができた。ロジスティック回帰のPPVは0.740であり両モデルとも、再発・再燃を良好に予測することができた。

    議論

    ・服薬アドヒアランス不良が最も強い再発・再燃の予測因子であり、ノンアドヒアランス群の55.8%が再発・再燃したのに対し、アドヒアランス良好群(過去1年間で非服薬期間の合計が2ヶ月未満、または服薬中止期間が2週間未満)の23%のみが再発・再燃した。

    ・失業は統合失調症患者における再発・再燃の高リスク因子であった。失業率に関する報告では、成人の統合失調症患者の75-90%が失業しており、失業は再発・再燃に寄与していることが報告されている。失業は他の高リスク因子、例えば世帯収入と関連する可能性があるが、相関分析によると、これら2つの要因の間には有意な相関性は認められなかった。この理由として、世帯収入が患者自身の収入を正しく反映していないこと、一人暮らしの患者が4.2%と少なかったことが考えられる。

    ・退院後1年経過した統合失調症患者においては、ADLの低下が再発を予測することも明らかになった。統合失調症患者のADLの障害を改善するために、社会的スキルのトレーニングが強く推奨される

    ・本研究では、再発の高リスク因子と予測因子を特定するために、ロジスティック回帰と決定木モデルの両方を使用した。しかし、ロジスティック回帰は、カテゴリー変数を用いており、変数によっては相互作用があるため、説明変数の非線形効果や相互作用の問題を適切に取り扱うことができない。したがって、決定木によってロジスティック回帰の知見を検証する必要がある。また、決定木モデルは一般化線形モデル(ロジスティック回帰)に対していくつかの利点がある。まず、一般化線形モデルと比較して、決定木モデルで出力される結果は、臨床の意思決定プロセスに類似しているため、理解しやすい。第二に、木構造は応答変数を事前仮定なしに分布させることができるため、より柔軟である。

    ・本研究では、これまでの報告で有意な再発・再燃のリスク因子として報告されてきた喫煙、アルコール依存、地方在住、薬の副作用、低学歴(9年未満)、入院期間(2ヶ月未満)、病気の経過(5年以上)、統合失調症の家族歴は、1年目未満の再発・再燃と有意な相関がみられなかった。この相違は、再発・再燃の定義や観察期間の違いに起因しているのかもしれない。

    ・limitationとしては服薬アドヒアランスは主として介護者への質問方式で後顧的に評価されたため、正確ではない可能性があること。また再発に関する情報は回答者から電話インタビューで提供されたものであり、誤った情報を与える可能性があり、想起バイアスが混入しやすいこと

    コメント

    ・統合失調症の再発・再燃予防のため疾病教育やLAI導入などによる良好な服薬アドヒアランスの維持とデイケアやSSTなどでADLを保持することの重要性を示唆する結果となりました。

    ・治療抵抗性統合失調症や統合失調症の再発・再燃に関する文献をみていると、この分野における慶應の先生方の本質的な仕事の多さにびっくりします。臨床的に重要なものばかりなので、いずれこの辺もきちんとまとめておきたいと思います。

     

    文献1:Wei-Feng Mi et al. Front. Psychiatry, 11 September 2020 | https://doi.org/10.3389/fpsyt.2020.574763

     

  • 求めていたものはあったのですが 2022年03月22日

    ・2021年05月25日の当ブログでも記載したように、統合失調症の維持療法期間において、どのような特性を有する方が抗精神病薬を中止可能なのか、そのような予測因子がわかるとありがたいなと思っていたら、今月号のSchizophrenia Bulletin誌に、現段階での答えにあたるような論文がでました(文献1)。

    ・結論的には、方法論的限界(共変量として抽出しうる因子に限界がある)もあり、現段階では介入試験の結果だけから明確な中断後の再発の予測因子を同定することができなさそうというものでした。

    ・残念なことですが、現状がわかっただけでもよかったですし、引用文献にあった、治療中断後、12週間以内に再発する患者としない患者で、PETで測定した治療中止時の線条体ドーパミン活性に有意差があったとの報告(Mol Psychiatry. 2020. doi:10.1038/s41380-020-00879-0. )などは今後のbiologicalな研究の進展に期待をもたせてくれるものでした。

    ・また治療中断前に経口抗精神病薬で治療中であった患者と、LAIで治療中であった患者とで、中断後の再発率に明確な差(調整後ハザード比で5.0)がみられたことも興味深いところでした。なおLAIの方が半減期が長いことも考慮して、各薬剤の半減期の5倍以上経過したところからの再発のみを抽出した結果ですので、半減期の違いも考慮した結果であり、このようなところにもLAIの優位性が存在するのかもしれません。

     

    抗精神病薬中断後の非再発要因

     

    背景


    ・一部の統合失調症患者は維持療法期間において抗精神病薬を安全に中断可能であることが報告されている。しかし再発リスクが低い患者を同定するための予測因子についてはよくわかっていない

    ・抗精神病薬を中断しうる予測因子については、主として選択バイアスのあるnaturalistic cohortのデータから抽出されていた(中断群が無作為割付ではない)。

    ・例えばOPUS cohort(n=496)では10年間の経過観察期間において、抗精神病薬中断後に長期寛解を維持した割合は30%であり、女性と物質使用障害がないことが予測因子と報告された(Schizophrenia Res. 2017;182:42-48)。しかしながら、中断群への割付は無作為ではないため、結果は不確実なものである

    ・同様の不確実性は類似した研究デザインの報告にもあてはまり、結果の再現性に欠けることとなる。例えば、141名の症状寛解状態にある初発統合失調症スペクトラム障害患者について、18カ月間オープンラベルで減量/中断群と、維持療法群に無作為割付したところ、減量/中断群では43%が再発し、維持療法群では21%で有意差を認めた。重要なことは、減量/中断群において、中断に成功したのは20%であり、30%は症状再発のため抗精神病薬再開を余儀なくされ、50%は中断が全く実現不能であったことである。その後の経過観察期間の7年目の時点において、再発率の群間差はなかったが、DUPが長いことが減量/中断群における再発の予測因子とされた(Schizophrenia Res. 2020;216:192-199)

    ・その他の、同様のデザインの試験では、10年間の試験期間の最後の2年間において23名(16.2%)が抗精神病薬を中断可能であり、抗精神病薬中断可能の予測因子として男性、統合失調症スペクトラム障害の診断割合(統合失調症ないし統合失調感情障害が含まれ、短期精神病性障害と妄想性障害、その他の精神病は統合失調症スペクトラムには含まれない)が低いこと(74%対94%)、DUP30日未満、ベースラインの認知機能が良好なこと、ベースラインから再発がないこと、最後2年間での社会的機能(SOFAS平均点)が良好であることなどが単変量回帰分析で抽出された。しかし多変量解析ではベースライン評価以降の再発がないことのみが最後2年間に抗精神病薬を中断可能な有意な予測因子であった(JAMA Psychiatry 2019;76(2):217-219)

    ・Selection biasと交絡因子を最小化するためには減量/中断が症状や患者の好みなどによらない無作為割付二重盲検試験が必要である。

    ・フルフェナジンとプラセボに無作為割付した小規模試験(n=17)では、病前の社会適応が不良なことがプラセボ群での再発の予測因子と報告された

    ・別の10年予後を評価したコホートでは、最初1年間のRCT期間で非再発率はプラセボ群 21%、抗精神病薬継続群では59%であり、プラセボ群での再発の予測因子として、言語流暢性課題の成績が不良であること、統合失調症の診断、まばたき回数が多いことであった。前頭葉機能障害およびドパミン系過活動の徴候が再発リスクと関連する可能性があるとされた(Schizophrenia Res 2013;50(1):297-302)

    ・別のRCTの事後解析結果では、プラセボ群(n=204)では43.5%が再発(中央値 163日)し、再発の予測因子として高齢であること、男性であることが抽出された(J Clin Psychiatry 2018;79(4):17m11874)

    ・これまで再発を予測する治療的要因(抗精神病薬の半減期など)や中断後の反跳性精神病の関連などについてはよくわかっていない。今回、selection biasや交絡因子の問題を回避するため、抗精神病薬中断のRCTにおいてpatient-levelおよびtreatment-levelのデータを用いて再発の予測因子を検討した。

    対象と方法

    ・Yale Open Data Access プロジェクトより臨床試験データを抽出。

    ・成人の統合失調症ないし統合失調感情障害患者を対象としたもの

    ・二重盲検プラセボ対照試験で抗精神病薬による3か月間以上の再発予防効果をみたもの

    ・エントリー前に臨床的に安定しているケースを対象としたもの

    ・抗精神病薬はプラセボ割付と同時に即時中断されたものであること

    ・観察期間は6か月以上に設定してあること

    ・主要評価項目においてpatient level dataが利用可能なもの

    ・再発の定義はそれぞれの試験の再発の定義を使用

    ・生存解析と多変量Cox回帰分析を施行し、調整後ハザード比を導出

    ・その後、経口抗精神病薬内服群と、LAI投与群とで、再発リスク因子について比較

    ・共変量として、性別、国、家族歴、喫煙、中等度以上の遅発性ジスキネジアの存在、中等度以上のアカシジアの存在、中等度以上の錐体外路症状の存在、年齢、BMI、CGI、PANSS総得点、PANSS positive、PANSS negative、PANSS general、PSP(個人的および社会的パフォーマンス尺度)を抽出

    ・副次的解析として抗精神病薬投与中止後の中止薬剤の半減期の違いによる交絡因子を排除するため、抗精神病薬投与中止後のイベント(打ち切りまたは再発)までの時間が半減期の5倍未満の人を解析から除外し、血漿から抗精神病薬が消失するまでの時間が十分に確認されてから経口抗精神病薬を安定投与した人とLAIを安定投与した人で再発のリスクを比較することとした。パリペリドンでは経口薬で5日、1カ月製剤で176日、3カ月製剤で365日とした。

    ・別の副次的解析においては、反跳性精神病の可能性に臨床的危険因子の違いがあるかどうかを検討した。そこで、ベースライン時に経口抗精神病薬を服用していた患者のうち、プラセボに割付された患者について、反跳性精神病期間(抗精神病薬中止後30日以内の再発と定義)の再発と30日を超える期間の再発による共変量の交互作用項を評価した。

    結果

    ・5つの統合失調症の再発予防試験のplacebo群からデータを抽出した(n=688)

    ・フォローアップ期間の中央値は118日、最長480日

    ・74.9%はLAIで安定しており、25.1%(n=173)は経口薬で安定していた。中断前の抗精神病薬安定投与期間の中央値は198日間

    ・最長480日までのフォローアップ期間において、全体として再発がなかったのは29.9%。経口抗精神病薬では、11.1%が再発がなく、再発までの期間の中央値は87日間。LAIでは36.4%が再発がなく、再発までの期間の中央値は294日間。LAIの経口薬に対する非再発の調整後ハザード比=3.56で有意差あり。経口抗精神病薬投与者は、LAI投与者に比較して中断後に3倍再発しやすかった。

    ・共変量の中で、喫煙(調整後ハザード比 1.54)、女性(調整後ハザード比 1.37)が有意な再発のリスク因子として抽出された

    ・副次的解析として、中断薬剤の半減期の5倍以内(抗精神病薬の97%が排出されたと推定される期間)の期間での再発を除外し、それ以降の再発のみを抽出した場合(n=328)、経口抗精神病薬での非再発率は11.3%で、再発までの期間の中央値は49日間、LAIでは非再発率は57.7%で、再発までの期間の中央値は146日間で、再発までの期間で群間有意差あり(調整後HR=5.0)。

    ・経口抗精神病薬で安定していた患者について、30日未満での再発群と30日以降での再発群について、共変量間の交互作用は、高齢であることが30日未満で有意に高い再発リスクとなった(調整後HR 1.07)以外は有意なものはなかった。遅発性ジスキネジアやアカシジアなどの共変量については、経口抗精神病薬群で中断時点でそれぞれ0名、1名であり、リスク因子として評価不能であった

    議論

    ・女性は男性よりもやや再発のリスクが高いことが観察されたが、これまでの報告で一貫性のない結果が報告されており、性別が再発のリスクに寄与しているかどうかは、さらに研究が必要。再発を予測する他の共変量はニコチン喫煙であり、これは以前から抗精神病薬離脱後、さらには抗精神病薬維持療法中の再発リスクと関連することが報告されている。しかしその他の乱用薬物に関する情報はなく、統合失調症の再発因子として既に十分に同定されている物質使用障害と比較して、喫煙がどの程度の大きさでリスクとして再発に寄与しているかは不明である

    ・その他の因子は再発リスクとして有意ではなく、日常臨床で得られる情報から、どのような患者であれば維持療法を中断しても安全であるかを特定することの難しさを示唆している。

    ・初発精神病患者を対象に1年間抗精神病薬を投与し、その後治療を中止した小規模サンプル(n=25)において、Kimらは12週間以内に再発する患者(40%)としない患者で、治療中止時の線条体ドーパミン活性に有意差があることを報告した(Mol Psychiatry. 2020. doi:10.1038/s41380-020-00879-0. )

    ・抗精神病薬を中止する場合、特に経口抗精神病薬で安定している患者に対しては、再発リスクを考慮し、投与量の減少に伴う血漿濃度の相対的な低下を最小限にするために、非常にゆっくりと行うべきである( JAMA Psychiatry. 2021;78(2):125–126.)

    ・反跳性精神病については、有意な影響を与えうるリスク因子について年齢以外は抽出することができなかった。これまで高齢、遅発性ジスキネジアについては反跳精神病のリスク因子として報告されている(J Psychopharmacol. 2011;25(6):755–762.)。しかし本研究のサンプルでは経口抗精神病薬中断時に遅発性ジスキネジアを呈していた症例がなかったため検討することができなかった

    コメント

    ・共変量に中断前の抗精神病薬のCP換算値もあれば反跳性精神病についての解析で、交互作用が有意な因子として抽出されないかなと思いました。また共変量として家族のEEや経済的状況なども評価した尺度があれば、より興味深いと思います。

    文献1:Georgios Schoretsanitis et al. Schizophr Bull. 2022 Mar 1;48(2):296-306. doi: 10.1093/schbul/sbab091.

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