院長ブログ

  • 里親と施設ケア 2022年09月19日

    ・PNASにかなり倫理的に実現が困難と思われるルーマニアでのRCTの結果が報告されていました(文献1)。何らかの理由で養護施設に入所した子供を里親ケア群と施設ケア群とに無作為割付し、18歳時点でのIQを評価したものです。

    ・倫理面への配慮として、どちらの群に割付されても、そのケアにあたって相応の資金援助を行ったとのことです。

    ・結論としては里親ケア群は施設ケア群と比較して有意に総IQが高いというものでした

    ・ただし、里親ケアでも施設ケアでも養育者によるケアの質が高いことが最も重要なmediatorであり、どちらの環境であっても質の高いケアを提供することがIQにとって重要であるということが示唆されました。

    ・質の高いケアの提供のためには何が必要なのかということも考えさせられる内容になっています

    里親制度とIQ

    背景


    ・低資源環境で育つ子どもたちの認知能力を強化するための早期介入は有用であるが、その恩恵は一般的に時間とともに薄れることが報告されており(J. Res. Educ. Eff. 10, 7–39 (2017).)、IQの向上は一過性である可能性が指摘されている。

    ・早期介入による効果が一過性にもので終わるか持続するかどうかは、そのような介入のための資金配分に大きな影響を与えうる

    ・家庭的環境で養育された子どもの認知機能は集団的環境で養育された子どもより優れているという報告はあるが(Science 318, 1937–1940 (2007).)、これらの養育が成人期初期まで長期的に効果を持つのか、ケアの質がこの優位性に関与するのか、人生のより早い時期に家庭的養育環境ですごした方が有利なのか、同じ養育環境を子ども時代の長期にわたって継続する必要があるかどうかは分かっていない。

    ・ブカレスト早期介入プロジェクト(BEIP)は、ルーマニアの何万人もの施設入所児童のケアに関する緊急の意思決定ニーズに対応するため、無作為割付デザインを用いて、早期剥奪体験後のケア強化と18歳時点でのIQとの因果関係を検討した。

    ・施設に暮らす幼い子どもたちは,ベースライン時の平均年齢が22カ月で評価され,質の高い里親への割付群(FCG)または施設ケアの継続群(CAUG)のいずれかに無作為に割り付けられた。

    ・研究者らはルーマニアの共同研究者とともに里親ネットワークを構築、維持し,資金を提供した。子どもたちが54カ月になった時点で研究者らによる里親ネットワークの管理は終了し、里親らの管理は地方政府に移管された。その後成人期早期まで追跡され、成人期早期でのIQが評価された。

    対象と方法

    ・合計135名の子供がエントリー。養護施設の子供は95名(うち46名が施設ケア継続、49名が里親ケア)、比較群(対照群ではない)として40名の地域在住の子供

    ・参加者は平均18.74歳までフォロー

    ・里親制度に興味のある成人にスタッフがコンタクトをとり、身元確認をされた後、ブカレストのNGOより施設で暮らす子どもの典型的な行動や習慣などについての研修を受けた。その後子供たちが30カ月、42カ月の時点でケアの質についてObservational Record of the Caregiving Environmentにより評価された。この評価は養育者(施設では子供がもっとも好きな養育者)と子供の間の様子を録画した際の行動により評価された。評価は感受性、発達への刺激、子どもへの肯定的な評価、平板化した感情(マイナス評点)、無関心(マイナス評点)の質的スコアを平均化することで作成。

    ・42か月時点で参加者はストレンジ・シチュエーション法(strange situation procedure)により愛着の質の評価をうけ、愛着の安全性を1点(安全性なし)から9点(最も安全)まででコード化した。

    ・無作為化後の数年間に、多くの子どもたちが養育先の転換を経験した。 施設ケアの子どもの多くは、最終的に新しく作られた政府主催の里親に預けられた。里親群に割付された子どものなかには,後に施設ケアに戻された子どももいたが,両群から実親に再会した子どももいた。

    ・49人の里親ケアの子どもたちについても、里親中断となったケースがあり、18歳まで継続的に研究jグループの割付した里親の元にとどまった場合、安定した里親ケア(FCG-stable;n = 20)とし、18歳までに一つ以上の養育先の変更を経験した子どもは里親中断群(FCG-disrupted;n = 28)とした。

    ・18歳時点で認知機能がWISC-IVにより評価された

    結果


    ・ITT解析の結果、里親ケア群の18歳時点での総IQは、施設ケア群よりも平均して9.00ポイント高かった。ベースライン時点の発達指数(DQ)スコアを共変量としてITT解析を再実行しても18歳時点での総IQの群間有意差は不変であった

    ・知覚推理(perceptual reasoning)やワーキングメモリーでは統計的に有意な差は認められなかったが、里親ケア群は、通常ケア群よりも、言語理解や処理速度において有意に高いスコアを示した

    ・ケアの質については、里親ケア群が施設ケア群より有意に高かった

    ・幼児期にケアの質が高かった人は、成人期早期の総IQ得点が有意に高かった

    ・媒介分析により里親ケアは早期養育の質を介して18歳時の総IQに有意な間接効果を持つことが確認された

    ・ケアの質を共変量としてモデルに含めると、総IQに対する割付群の効果は有意ではなくなった。

    ・ケアの質の代わりに、いくつかの追加の媒介因子(愛着の安全、身長、体重、頭囲、運動発達、ストレス因子に対するコルチゾール反応性)の影響を評価した。これらのうち、42カ月時点で評価された愛着の安全性だけが、18歳時の総IQに対するITT効果の統計的の有意な媒介因子であることがわかった。

    ・これらの結果は、介入が養育関係の改善によって認知能力を向上させたことを示唆しており(養育の質は総IQに対する介入効果の49%を説明し、愛着の安全は総IQに対する介入効果の71%を説明した)、より質の高い養育関係が、介入が成人早期の総IQに影響を与える機序を説明しうる要因であることを示唆している。

    ・里親の元に移った年齢と18歳時点の総IQとの間には小さな負の相関があった。人生の早い時期に里親ケアを開始した人は、総IQが高い傾向があった

    ・施設養育歴のある子どもと施設養育歴のない子どもを比較したところ、施設入所歴のある参加者の18歳時点での総IQは、比較群のスコアより平均26.21ポイント低かった。人生の早い時期に質の高い養育環境に置かれたとしても、人生早期の心理社会的剥奪の認知機能への持続的な影響を完全に改善するには不十分であることが示唆される。

    議論

    ・早期環境を改善することで持続的な効果が得られるという証拠がこれまでも報告されている。Carolina Abecedarian Project,は、高リスクの幼児を質の高い早期教育および/または通常の小学校教育に無作為化して研究し、早期介入を受けた人は、成人期初期(21歳)にIQスコアと教育到達度が高いことを明らかにした(Appl. Dev. Sci. 6, 42–57 (2002))

    ・同じく、Perry Preschool Projectでは質の高い就学前教育と週1回の教師による家庭訪問が行われ、54歳時点の実行機能は、介入を受けた者の方が対照群より優れていることが報告された( https:/doi.org/10.3386/w29057. )

    ・今回の結果は、幼児期を通じたケアの質も成人早期のIQに重要である可能性があることを示唆している。しかし,IQの低い子どもは不安定な環境に置かれるリスクが高いため,養護施設でのケアの質とIQとの関連性を解釈することは困難でもある

    ・当初は成功した多くの介入の効果が長続きしない理由の一つは、質の高い養育環境が長期にわたって持続しないことであるかもしれない。つまり、介入終了後に遭遇する家庭や学校の環境が、介入中に経験したものより豊かでなくなることによって説明される可能性がある

    ・家庭をなくした子供たちにとって、長期的な質の高いケアの提供を行うことが、養育を必要とする子どもの認知発達を高める最も有利な戦略であることを示唆する

    ・Limitationとして、サンプルサイズが小さかったこと。認知機能に関連する他のいくつかの因子(出生前のケアや出生前後の栄養など)を調べることができなかったこと。また成人用の知能検査ではなく、WISCを用いたこと(IQの低い参加者に対応するため)でfloor effectが懸念されること

    コメント

    ・ルーマニアでの結果であるため、日本の状況にそのまま適応することはできないかと思われますが、ケアの質を高めるには十分な予算配分と適切な人員配置も重要なことかと思われます。

    文献1:Humphreys KL et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2022 Sep 20;119(38):e2119318119. doi: 10.1073/pnas.2119318119. Epub 2022 Sep 12.

  • レセルピン 2022年09月07日

    ・レセルピンとうつの関係についての系統的レビューが出ていたので読んでみました(文献1)。VMAT2に作用する点はバルベナジンと同じですね。

    ・いろいろ参考にはなったのですが、途中で了解困難な議論をされていて、そこから先に読み進めなくなってしまいました。

    ・あと途中の文章も、引用元の論文を読んでみると?な記載もいろいろあり、自分で調べてまとめなおしたりなどしています。


    背景


    ・レセルピンはRauwolfia serpentinaという植物の根から抽出されるアルカロイドで、インド医学で昔から統合失調症などに使われてきた

    ・その後西洋でも降圧薬として使用されてきたが、1950年代初頭からの副作用としてのうつ病の報告によりその使用頻度は激減した

    ・レセルピンはドーパミンやノルエピネフリンなどのカテコールアミン貯蔵小胞に不可逆的に結合し、小胞モノアミントランスポーター2(VMAT-2)を不可逆的に阻害することにより、カテコールアミンを著しく減少させる

    ・レセルピンのうつ病誘発作用については、疑問視する声もある。その1つは、レセルピンがうつ病を誘発するという主張は、精神科医以外の医師による観察に由来しており、経験のある精神科医が評価した場合、患者がうつ病の診断基準を満たすことはほとんどなかった点である。例えば、アカシジアはレセルピンの副作用であり(他の神経遮断薬と同様)しばしば気分エピソードと誤診される。しばしばレセルピンは初期には高用量で使用されており、アカシジアやジスキネジアを引き起こしていた。

    ・以前のレビュー(J History Neurosci 12: 207–220.)においては、症例報告では14 studies(61症例)について精査され、原著論文でのうつ病発症率は66%とされていたが、DSMに照らし合わせて考察が可能であった40症例においてうつ病とされたのは20%であった。また集団での11 studies(主に高血圧に対する処方でのうつ病発症率。副作用として報告されたもののためきちんとした診断基準に基づくものは乏しい)について解析すると全体の中央値は10%程度であったことが報告されている

    対象と方法

    ・レセルピンの効果を、任意の用量と期間で評価したもの。参加人数が10人以上

    ・対照群が設定されたもの

    ・うつ症状についてのアウトカムが評価されたもの

    ・35 studiesの系統的レビュー

    結果

    ・35 studiesのうち49%は観察研究で、26%がRCT、17%が非ランダム化介入試験、8%が横断研究

    ・43%の試験は高血圧患者を対象にしたもの、25%は様々な精神疾患を対象。11%はうつ病を対象としたもの、2 studies(6%)はコカイン依存、2 studiesは統合失調症圏、1 studyは不安、1 studyは健常者、1 studyは不安とうつを対象

    ・20 studiesにおいて、群間でのうつ症状出現率を比較。

    ・群間比較を行った20 studies(n=2071)のうち8 studies(n=711)においてレセルピン投与群は非投与群よりも数値的に高い(統計的にではなく)うつ症状(重症度尺度やエピソード回数)を報告し、6 studies(n=1077)では投与群と非投与群とで差がなく、6 studies(n=283)でうつ症状がレセルピン投与群の方が非投与群よりも数値的に軽度であったことが報告されている

    ・健常者72名を対象にレセルピン、アリピプラゾール、ハロペリドール、プラセボを1週間投与しHAM-D変化量をみた試験では、うつ症状出現率はアリピプラゾール6名 (33.3%)、ハロペリドール 3名 (16.7%)、レセルピン 10名 (55.6%)、プラセボ群 1名 (5.6%)でレセルピン群が最も多く、HAM-D得点は8日目でレセルピン群はプラセボ群より有意に悪かった

    ・統計検定は行われていないが、数値的にうつ症状出現の割合が対照群より高かったのは、観察研究においていずれも高血圧患者を対象とした試験における植物根抽出物などとの比較試験が2つ(うつ症状出現率:レセルピン群39%対根抽出物群32%、レセルピン群18%対植物根抽出物8%)、クロニジン、プラセボとの比較試験が1つ(レセルピン群10%対対照群0%)、高血圧患者におけるプラセボ対照介入試験が1つであった(レセルピン群19%対プラセボ群0%)。

    ・うつ症状出現率において対照群と明らかな差がなかったのは、6 studiesであり、1つは様々な精神疾患(多くは精神病圏)を対象としたクロルプロマジン対照試験(レセルピンn=63、クロルプロマジン n=89、2剤をクロスオーバーで投与(1剤目が無効のため)n=27)。両薬剤ともに不安、緊張、過活動、不眠などの症状改善に効果がみられ、うつ症状は両薬剤に反応せず、一方、強迫観念を伴ううつ症状は、強迫観念の内容は変化しないが、緊張緩和によって間接的に恩恵を受けることがあったと報告されている(Am J Psychiatry 112: 782–787.)

    ・不安を有する患者71名を対象とした6週間のプラセボ対照クロスオーバー試験において42名が完遂し、OC解析では、42名中31名が改善し、改善割合はレセルピン群とプラセボ群で有意差なし(AMA Arch Gen Psychiatry 81: 392–398.)

    ・症例対象研究において60歳以上で1年以上レセルピンを投与されている787名と非投与コントロール群787名でうつ症状尺度を評価したところ、群間有意差はみられず、レセルピン投与群の87.6%、対照群の88.2%でZung Self-Rating Depression Scaleで52点以下であった(J Geriatr Cardiol. 2019 Aug;16(8):608-613)。

    ・観察研究において高血圧でレセルピンを投与された44名において4名の患者が重度うつ症状を呈し、うち3名が妄想を伴うメランコリアであった(Lancet. 1955 Jul 16;269(6881):116-7)

    ・コカイン依存患者にレセルピン(n=60)ないしプラセボ(n=59)を投与し12週間比較したRCTにおいて依存症改善度は有意差なし。HAM-Dについても群間有意差なし(Drug Alcohol Depend. 2007 Dec 1;91(2-3):205-12.)

    ・高血圧患者466名についてレセルピン+利尿剤ないし利尿剤単独、β遮断薬+利尿剤、無投薬の4群比較についての前向き観察研究で、Zung SDS 50点以上のうつ症状を有する割合は全体で35.4%であり、レセルピンないしβ遮断薬を投与中の患者のうつ症状を有する割合は、無投薬ないし利尿剤投与群と比較して有意差なかった(J Fam Pract. 1991 Nov;33(5):481-5.)

    ・うつ症状ないし不安症状を有する外来患者67名を対象にプラセボ対照で約6週間全体的な症状改善度を評価したところ、治療者評価、患者評価共にレセルピン群で有意にプラセボ群より良好であった(Lancet. 1955 Jul 16;269(6881):117-20.)

    ・3週間以上の三環系抗うつ薬治療に反応しなかった内因性うつ病患者14名を対象にプラセボ対照で2日間レセルピン(n=8)ないしプラセボ(n=6)を投与し、HAM-D変化量を4日目に評価したところ、HAM-D変化量はレセルピン群 18.87点、プラセボ群 6.00点で有意差あり(Psychiatr Clin (Basel). 1975;8(3):109-14. )

    問題の箇所

    ・論文p8に”When pooling depression rates after reserpine across all available studies, the rate was 27% for participants with psychiatric illnesses at baseline while the rate for non-psychiatric patients was 23% . What differed more between these participant groups was the rate of depression in placebo treated participants; 10% across eight psychiatric population studies (n=182) and 1% from six non psychiatric studies (n=316). If then calculating the percentage difference overall between participants in reserpine compared with control arms, an increase in depression of 17% is found in populations with mental illnesses (27% reserpine vs 10% placebo) and the increased rate of depression in populations without mental illnesses is 22% (23% reserpine vs 1% placebo). Speculatively, this could support the view that reserpine is less depressogenic in people with existing psychiatric illnesses”
    と書いてあって、なぜこのようなことをしたのか理解できず前に進めなくなりました

    ・このような単純にpoolして比較する処理は、いろいろな前提条件がクリアできないとしてはならないことだと思われます。simpson's paradoxとしても知られていることで、統計学的に間違いである可能性のある推論(ここでは最後の一文の”Speculatively, this could support the view that reserpine is less depressogenic in people with existing psychiatric illnesses”)につながるリスクがあるからで、特にこの総説に含まれた論文のように異質性が極めて高いことが想定される場合にはさらにこういうことはしてはならない手法になります。

    ・その理由を以下のような簡単な例で確認してみます。レセルピンの副作用としてのうつ症状出現率を精神疾患がある群と、ない群とで、それぞれ2つの試験を行い(ただしそれらの試験は各々評価尺度や患者背景など異なるものとする)、以下のような結果を得たとします。ただし論文にあるように、単純にpoolした精神疾患ありの群では対照群との差が17%となるように設定し、精神疾患なしの群では対照群との差が22%になるように数値を調整してあります。

    ・精神疾患ありの群を対象とした場合のうつ症状出現率
        レセルピン プラセボ
    ・試験A  40/146  1/10
    ・試験B  5/20   8/80

    ・精神疾患なしの群を対象とした場合のうつ症状出現率
         レセルピン プラセボ
    ・試験C  22/80    8/10
    ・試験D  10/20   12/190

    ・このような結果が得られた場合に、単純に各試験のうつ症状出現率をpoolすると以下のようになります。

    ・精神疾患ありの群で、試験Aと試験Bのレセルピン投与群での合算=45/166=27%、プラセボ群での合算=9/90=10%。レセルピン群とプラセボ群との差は17%

    ・精神疾患なしの群で、試験Cと試験Dのレセルピン投与群での合算=32/100=32% プラセボ群での合算=20/200=10%。レセルピン群とプラセボ群との差は22%

    ・というわけで、論文では精神疾患なしの群の方が、対照群との差が数値的に大きい(17%対22%)ので、精神疾患を有する群の方がレセルピンによるうつ症状誘発作用は乏しいと推察していますが、このような推察は正しいでしょうか。

    ・結論からいうとこれはまずい方法となります。このような形でpoolする議論が問題なく行えるためには、すべての試験で患者集団が均一(人口統計学的な特性や合併症など)で、うつ症状の評価尺度や評価者、投与量などすべてが同じとみなせるという仮定が成立する場合だけで、実際にはそのような仮定はなりたちません。

    ・ではどのようにするのが望ましいのかというと、まず試験毎に相対リスクなどに変換し、適切な方法で重みづけをして(random effects modelなどで)でpoolする通常のメタ解析の方法が適切ということになります

    ・実際にここに示したデータで強引に変量効果モデルでメタ解析を行うと(試験数が少ないので通常はする意味がないのですが)、精神疾患あり群のうつ症状発現の対プラセボの相対リスクの点推定値は2.55(95% CI 1.57 to 4.14)、精神疾患なし群の相対リスクの点推定値は1.63(95% CI 0 to 7.37E+8)となり、両群間の有意差はなく(p=0.78)、どちらがうつ症状出現のリスクが高いなどという議論はできないことがわかります(ただし点推定値だけみると精神疾患あり群の方がリスクの大きな数字となりうる)。つまり論文で示されていた”Speculatively, this could support the view that reserpine is less depressogenic in people with existing psychiatric illnesses”という推論が全く成り立たず、その逆が真である可能性もあることがわかります。

    ・簡単にできるのでついこのような単純な合算をしたくなる気持ちもわからなくもないのですが、通常はしてはならない処理ということになります

    文献1:Strawbridge R. et al. J Psychopharmacol. 2022 Aug 24;2698811221115762. doi: 10.1177/02698811221115762. Online ahead of print.

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