臨床試験の進捗にCOVID-19が与える影響をあまり耳にすることはなかったのですが、これまでも触れたことのあるALSに対するBrainStorm社の自家間葉系骨髄幹細胞移植であるNurOwn細胞の第3相試験(NCT03280056 )が受けた影響が報じられていました。

結論からすると臨床試験の進捗に与える影響は、それほど大きなものではなかったようで、関係者の皆さんを安心させていますが、最も問題となるのは、受診をしないと評価できない臨床尺度をどうするかです。

臨床試験においては臨床症状の経時的な評価が重要であり、この第3相試験においても主要評価項目であるALSFRS-R得点が、正確な頻度は不明ながら、少なくとも3か月に1回以上は測定されるはずだと思われます。

このALSFRS-RはALSの進行を測定する際に用いられる最も標準的な指標であり、患者さんが受診をし、診察を受けて測定されることが通常です。しかし、今回のCOVID-19のパンデミックにより、受診をしての測定はやはり困難(何より患者さんが感染することは避けないといけない)な場合があるようで、遠隔での評価で代替されるようです。しかし副次的評価項目である髄液中のバイオマーカーについては測定ができない状況も起こり、データの欠失が起こりうるものと思われます。

アメリカの6つの施設で行われているこの臨床試験は、COVID-19流行以前(昨年10月)の終了予定時期が2020年10月頃でしたが、終了予定時期はそれほど影響を受けておらず、今年中には結果が判明する予定だということです。近年のALS臨床試験の中で最も期待されている試験であり、COVID-19の影響をあまり受けることなく順調に結果が出て、それが良好な結果であることを期待するばかりです。

精神疾患に対する臨床試験でも、同様の問題が起こりうると思われますが、そのあたりはどうなのでしょうか。既に新薬の発売時期は遅延などの影響が生じていますが、臨床試験があまり影響を受けないことを願います。