4月1日にアメリカ睡眠医学会のWebinarが行われました。
この時すでにアメリカでは新型コロナウイルスが猛威を振るっており、社会的不安が高まる状況の中で、睡眠専門家がどのようにセルフケアすべきかについて、メリーランド大学の睡眠生理学者のEmerson Wickwire博士が講演しました。

 

Zoomで行われ、アメリカ東部時間の正午から開催で、日本時間の午前4時開始だったので、私は待ち構えていたのですが、結局寝落ちしてしまいました。しかしその後ありがたいことにYoutubeで無料公開されたので、誰でも見ることができます。
興味がある方は”Self-Care for Sleep Professionals During Difficult Times”で検索してみてください。

 

内容は、いかに不安と向き合い、不安を減弱し、睡眠に入りやすくするか、そして終息後に向けて、というものでした。


内容の多くは第3世代認知行動療法がベースにするマインドフルネスの概念などから引用されたもので、馴染みのある内容でしたが、あらためて聞いてみて、実際にwhat if・・よりもwhat is・・に注目するという辺りは、私自身の最近の入眠困難にも効果があった気がします。

CBT-iなど、どんなものか耳学問では知っていても、いざ自分がとなるとなかなか自分に対してはうまくはいかないものです。
内容のアウトラインを以下に書いてみます。

 

緊張からの開放

目を閉じて、自身の身体の緊張している部位を感じます。


次に、ストレスをクールダウンさせるための呼吸を3回行います。腹式呼吸で行い、横隔膜が下がり腹部が膨らむことを意識します。
4秒で息を吸い、8秒で吐く。それも合計3回繰り返します。


これにより緊張から解放されます。

心の柔軟性を開放し、不安を減らす

 

次に心の柔軟性を開放します。心が柔軟性を失うと、慢性的な不安に取りつかれたり、慢性的なうつ状態に陥ったりします。


不安の一部は恐怖から生じます。


恐怖は不確実性が存在するとより強まります。


不確実性を無くすことから始めましょう。


まずは不安に思うことを書き出します。


次に自分がどうしたいかを明確にします。


さらにさまざまな代替案を考えます。ブレインストーミングの手法を用います。より自分自身が不安にならない方法を考えます。
たとえば、収入を失うかもしれないという不安であれば、まずファイナンシャルプランナーと話し、ついで公的扶助について調べ、さらに上司に悩みを打ち明けるなど。


ついで考え出した案について、賛否両面から評価します。

最後に行動します。

不安を防ぐには、ネガティブな考えに陥る材料を遮断し。不確実な情報源からの情報を遮断し、信頼できる情報源のみから情報を得ることが重要です。ワイドショーやtwitterなども、不要な不安を煽られるならば遮断しましょう。

覚醒を制御する

 

覚醒を制御するためには、儀式的なプロセスを構築することが望ましいです。

 

例えば、仕事が終わりメールを遮断することが最初の段階となります、次いでTVを見るなどするリラックスする時間帯をつくり、TVを切ることで次の段階に進みます。睡眠前段階では、歯磨きなどを行います。歯磨きを終えることで次の段階に進み睡眠に入るようにします。

 

このように一連の流れを儀式化、習慣化することにより、覚醒を制御しやすくなります。

ポジティブな感情を増やす

 

認知行動療法の基盤でもありますが、感情と行動と思考は相互に影響しあっており、どれかを変えることで、お互いを変化させることができるとの仮説があります。


どんな小さなポジティブな感情であっても、行動や思考を変化させうるとの考えに基づきます。逆にちょっとした行動や思考がポジティブな感情を産み出しうることとなります。


最初のステップは、現実は何かに集中することです。もし・・だったらではなく、現実は何かに集中します。もし・・だったらは多くの不安を産み出します。

例えばもし感染が広がったらどうしようとか、もし彼氏が浮気していたらどうしようとか、そういう考えではなく、現実のこと、現実に起きたことのみに集中します。


30秒だけ、視覚以外の感覚を用いて、何が聞こえるか、どんなにおいか、どんな味か、どんな感触か、を描写します。


これにより、ポジティブな感情への感性を高めます。


続いて、3つから5つの、ちょっとした感謝できる事実の出来事を思い浮かべます。


例えば、朝がとても静かな時間だったとか、子供と一緒に葉の上の水滴探しをしたとか、家族と歩くときに日差しを感じられたとか、誰かと一緒に過ごせたこととか、ちょっとした日常の中の感謝できることをでいいのです。

 

寝付くときに、頭の中をぐるぐると不安が渦巻く状況においても、この手法は適応できます。頭の中を、もしも・・ではなく、現実の出来事で埋めていきましょう。そうするといつの間にか眠りに入るでしょう。

 

他にもいくつかのtipsがありましたが、専門家が話すとなんとも説得力のあるお話でした。明日にでも緊急事態宣言が出されようかという状況の中、少しでも皆さんが心身ともにご健康であることを願います。

 

最後に、私自身が参考にしているサイトをご紹介します。
もちろん行政機関からの情報は重要ですが、これからどうなるのか、どのように注意すべきかという科学的な根拠と指針が示されているという点で、参考になりました。モデルに基づいた数式からの解析ですが、多くの専門家が信頼できる情報源として認めるところと思います。(基本再生産数3.0を仮定しているので、実際よりも多く見積もられているかもしれません)
佐藤彰洋教授による情報です。
https://www.fttsus.jp/covinfo/considerable-discussion/


ここから得られる情報で重要な点は、仮に基本再生産数が3.0であり、このモデルが妥当であれば、直接接触の機会を8%まで減らしても、その後ダラダラと感染者数が横ばいな状況が続いていくということです。


人と人との接触機会を減らすことに躊躇してはならないというメッセージが伝わります。