・アゴメラチンといえは、こちらの論文(Luo Y. et al. Res Synth Methods. 2021 Jan;12(1):74-85.)で高い受容性を示しており、なんとなく気になっていたのですが、今回児童思春期うつ病に対する介入試験が報告されました。

・アゴメラチンはメラトニン受容体刺激作用とセロトニン2C受容体拮抗作用を併せ持つユニークな物質で構造式としては結構メラトニンに似ているようです。

・今回、アゴメラチンの児童思春期うつ病に対する介入試験が公表された(文献1)ので、見てみます。ただ、併用した心理療法についての詳細がサプリメントにも簡単にしか記載されていなくてよくわからなかったり、図が全くない(これについては、主な解析手法の性質上仕方ないのかもしれないですが)など、なんだか物足りない感じもしました。結果を図示してみたかったので、最後にサプリメントの生データを使用して図を勝手に作ってみてます。

心理療法併用児童思春期うつ病へのアゴメラチン

背景


・現在児童思春期うつ病(8-17歳)に対してFDAおよび欧州医薬品庁から承認されている薬剤はフルオキセチンのみ、思春期うつ病(12-17歳)に対してはさらにエスシタロプラムがFDAから承認されている。

・アゴメラチンは、メラトニン受容体アゴニストおよび5-HT2C受容体アンタゴニストというユニークな作用機序を持ち、成人うつ病に承認されている

・今回児童思春期うつ病患者を対象に、心理療法併用で、プラセボおよびフルオキセチン対照で介入試験を行った


対象と方法

・7-11歳(児童)および12-17歳(思春期)の大うつ病患者で、3週間のrun-in期間における心理療法に反応しない(CDRS-Rで45点以上)もの

・治療抵抗性うつ、精神病性うつ、入院症例、自殺企図リスクのある患者などは除外

・プラセボ対照無作為割付二重盲検比較試験

・心理療法は月1回のセッション+宿題で行われ、1回のセッションは45分。(1)心理教育、(2)気分・思考の観察、(3)資源の強化、(4)問題解決スキル、(5)家族間交流などから構成された。

・試験期間:12週間

・アゴメラチン10mg群  n=102
・アゴメラチン25mg群  n=95
・フルオキセチン10-20mg群 n=100
・プラセボ群 n=103

・主要評価項目:12週間のCDRS-Rの変化量

結果


・中断率はアゴメラチン10mg群 8%(102例中8例)、アゴメラチン25mg群 12%(95例中11例)、プラセボ群 16%(103例中16例)、フルオキセチン群 13%(100例中13例)

・罹病期間の中央値は94.5日

・独立変数として治療群、国、年齢サブグループ(児童および思春期)の3つの固定要因、共変量としてベースラインの特性(詳細不明だがおそらく性別や罹病期間、過去のエピソード回数など?)を用い、12週時点でのCDRS-Rのベースラインからの変化量を三元配置共分散分析で評価した結果、調整後のCDRS-Rの変化量のプラセボとの差は、アゴメラチン10mg群  3.18(95%CI -0.37 to 6.73)、アゴメラチン25mg群 4.22(95%CI 0.63 to 7.82)、フルオキセチン群 3.74(95%CI 0.18 to 7.30)であり、アゴメラチン25mg群とフルオキセチン群はプラセボと有意差あり。

・効果量はアゴメラチン25mg群で0.29、フルオキセチン群で0.26

・12週時点でのCDRS-R28点以下で定義した寛解率は、アゴメラチン10mg群、102例中14例(14%)、アゴメラチン25mg群、94例中15例(16%)、フルオキセチン群99例中12例(12%)、プラセボ群101例中11例(11%)で有意差なし

・12週時点での反応率(CGI-Iで1点ないし2点で定義)はアゴメラチン10mg群48%、アゴメラチン25mg群49%、フルオキセチン群47%、プラセボ群45%で有意差なし
CGI-Sも有意差なし

議論

・過去に行われた小児臨床試験におけるフルオキセチンの効果量(0.4~0.5)よりやや低い数値となった。プラセボ反応率が高かった。

コメント

・アゴメラチンの利益という観点からはごくわずかという印象です。効果があるとしてそれがコストに見合うのか、というところになりそうです。プラセボ反応率が高いのは心理療法の効果が大きかったのでしょうか。しかし心理療法は月に1回、12週間で3回のみなので、そこまで大きな効果があったのか疑問です。最後にCDRS-Rの変化の様子を図示しておきます。

ago

文献1:Celso Arango et al. Lancet Psychiatry. 2021 Dec 14;S2215-0366(21)00390-4. doi: 10.1016/S2215-0366(21)00390-4. Online ahead of print.