藤田医科大学の岸先生らが、スボレキサントとレンボレキサントについてのネットワークメタ解析の結果を報告され(文献1)、主観的尺度について興味深い報告をされていますが(詳細は省きます)、以前スボレキサントとレンボレキサントについて、高齢者ではどうかということを勉強会で文献的に検討したことがあり、岸先生らの論文の結果に触発されて、高齢者におけるデータを用いて解析したら何かでてくるのではないかと思い、手持ちのデータでネットワークメタ解析をしてみました(selection biasの問題があるので、よろしくないことではありますが)。


どのような点を明らかにしたかったかというと、文献1ではスボレキサントとレンボレキサントの18歳以上の原発性不眠症を対象とした介入試験の結果を解析対象としており、ポリグラフを用いた客観的指標については、例えば1か月時点での客観的持続睡眠潜時(LPS)は両群間有意差がでていない結果となっています(主観的指標では有意差あり)。しかし高齢者についての結果(SUNRISE1試験(文献2)および文献3)を見た感じでは、レンボレキサントは投与開始後1カ月時点での客観的持続睡眠潜時の短縮効果についても、プラセボと比較してなかなか良好なものがあるのではないかという印象をもっており、高齢者では有意な結果が出るのではないか、と期待したものです。


Rのnetmetaパッケージを用いて、頻度論によるネットワークメタ解析をrandom effectsモデルで解析してみました。評価尺度は投与1か月後のPSGによる客観的持続睡眠潜時(LPS)となります。結果は以下となりますが、有意差はなく、期待した結果は得られませんでした。しかしかなり良い線をいっている印象です。

netmeta1

ネットワークメタ解析をきちんとするためにはデータの均質性や結果の一致性などを慎重に評価する必要があり、inconsistencyはありませんでしたが、均質性の評価はすっとばしています。もうちょっと症例数が蓄積すると結果が違ってくるかもしれません。オレキシン2受容体への選択性が高いことからノンレム睡眠を増加させることが期待されるとのことであり(文献1)、悪夢などの副作用がどうかについても気になるところです。

引用文献
1)Kishi T. et al. J Psychiatr Res. 2020 May 28;128:68-74. doi: 10.1016/j.jpsychires.2020.05.025. .
2)Rosenberg R, JAMA Netw Open. 2019 Dec 2;2(12):e1918254. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2019.18254.
3)Herring W. et al. Am J Geriatr Psychiatry. 2017 Jul;25(7):791-802. doi: 10.1016/j.jagp.2017.03.004. Epub 2017 Mar 8.